歯周病から他の病気に


歯周病と全身の病気―糖尿病

歯周病は糖尿病のリスク因子

厚生労働省の調査によると、糖尿病が強く疑われる人は740万人、可能性を否定できない人を合わせると1620万人(平成15年『糖尿病実態調査)もの数にのぼることがわかりました。

糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが不十分なため、血液に含まれるブドウ糖の量(血糖)が異常に多くなる病気です。血糖値が高い状態が長く続くと、血管壁に負担がかかり、その結果、さまざまな合併症を引き起こします。三大合併症といわれる腎症や網膜症、末端神経障害をはじめ、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞など、合併症は全身に及びます。しかし、血糖が高いだけで自覚症状はとくになく、それが糖尿病の怖いところでもあるのです。

最近の研究で、歯周病菌がこの糖尿病の病状を進め、悪化させるものであることがわかってきました。これまで、糖尿病が歯周病のリスク因子であることは知られていましたが、逆に、歯周病も糖尿病のリスク因子であることが解明されてきたのです。歯周病と糖尿病は、お互いに悪影響を与え合う存在であるのです。


歯周病と全身の病気―妊娠への影響

妊娠中の歯周病は、早産や低出生体重児の確率が7倍に

数年前、アメリカで発表された次のような報告に、妊婦さんたちはさぞ驚き心配したことと思います。それは、妊娠している女性が歯周病にかかっていると、早産になったり、赤ちゃんが低出生体重児となる確率が7倍も高くなる、というものでした。

早産とは、妊娠23~36週での出産をいいます。37週以降のお産であれば、ほぼ成熟した赤ちゃんが生まれますが、それ以前の出産、それも週数が少なければ少ないほど、赤ちゃんはまだ小さく、おなかの外に出ても自力で生きていく可能性は低くなります。最近は数百gで生まれた赤ちゃんも、NICU(新生児集中治療室)などの設備が整った病院であれば、育つことができるようになってきてはいますが、それでも早産は避けたいトラブルです。

また、低出生体重児というのは、生まれたときの体重が2500g未満で、正常範囲より少ない体重で生まれた赤ちゃんのことをいいます。これまでも、タバコを吸っている妊婦さんから生まれる赤ちゃんは低出生体重児となりやすいと指摘されていましたが、歯周病も妊婦さんにとって、新たな危険因子となったのです。


歯周病と全身の病気―心内膜炎・誤嚥性肺炎

歯周病菌が心臓に入り込み心内膜炎を発症

歯肉の血管から侵入し、全身をめぐる歯周病菌は、体内のいろいろな臓器にもぐり込み、新たな感染症を引き起こします。

心内膜炎もそのひとつです。心内膜炎は、心臓の内側をおおう膜に生じた炎症ですが、かかるのはもともと心疾患を持っている人がほとんどです。先天性心疾患で心臓の弁に障害があったり、ペースメーカーを入れている人は、弁の周囲の血液の流れが滞りがちなため、そこに歯周病菌が入り込むと、心内膜に炎症を起こしてしまいます。もっとも心内膜炎を起こしやすいのは左心房と左心室の間にある僧帽弁で、大動脈弁がこれに続
きます。

以前から、心内膜炎を起こす細消のおよそ半分は、口腔内常在菌の緑色連鎖球菌であることはよく知られていました。それに、歯周病の原因菌であるグラム陰性菌も加わったわけですが、ほかにもカンジダなど多くの菌が原因になっています。

代表的な症状は発熱です。疲労や、倦怠感、頭痛などがみられる場合もあります。

先天的な心疾忠を持つ人は、歯周病予防をとくに心がけ、歯磨きの際の出血など少しでも症状があるときは、早めの治療に努めましょう。また、歯周病菌に限らず、口腔内常在菌でも発症しますから、歯の治療を受ける場合は、持病があることを告げることが大切です。とくに、先天性心疾患のある子どもの場合は、虫歯治療の際も注意が必要なため、治療前に、抗生物質を投与することもあるようです。


歯周病と全身の病気―動脈硬化

歯肉の血管にもぐり込み、全身をめぐる歯周病菌

これまで歯周病は、口の中に限った病気とみられてきました。しかし、さまざまな研究の結果、現在では、歯周病と全身の病気との関係が指摘されています。歯周病菌の影響で、糖尿病などの持病が悪化したり、動脈硬化や心内膜炎などの病気を引き起こすほか、早産など妊娠中のトラブルにも影響を与えるといったことがわかってきたのです。

歯周病菌が全身の病気を引き起こす理由は、歯肉にある豊富な毛細血管にあるようです。歯周病原因菌のグラム陰性菌が歯肉組織まで侵入してくると、豊富な血管に入り込み、血液を介して全身にまわります。その結果、体の各部に病気を発症させることになるのです。また、グラム陰性菌以外にも、菌に対抗するため免疫機構が作りだすサイトカインなどの生理活性物質も関係しているとみられています。

歯周病菌が血管に付着し動脈硬化を起こす

歯周病菌が引き起こす病気のひとつ、動脈破化から説明しましょう。動脈硬化とは、動脈の血管の内側にコレステロールなどが付着して、内腔が狭くなり、血管の弾力性が失われ硬くなった状態をいいます。

この動脈硬化になった血管壁から、歯周病菌が検出されることが多々あり、これは、歯肉の血管から全身にまわった歯周病菌が血管壁に付着し、そこに血小板などが引っかかり、動脈硬化になったとみられています。

以前は、コレステロールが血管に付着することから、高脂血症が進んで動脈硬化になるとみられていました。しかし、細菌やウイルスが引き金となり、動脈破化を起こすこともある、というのが最近の見解です。


歯肉炎から歯周炎へ、症状は進む

歯を磨いたときに出血したら早めの対処を

歯周病とは、歯を支えている歯肉や骨に障害の起きる病気のことで、このうち、歯肉に限った炎症を歯肉炎、骨を含めた歯周組織にまで炎症が広かったものを歯周炎といいます。

歯と歯肉の間には歯周ポケットという溝があり、健康な場合で、約1~2mm程度の深さです。ここは歯周病菌が好んで住み着く場所で、歯周ポケットのどこに増殖するかで、菌の種類も異なります。歯肉炎の原因菌のグラム陽性菌は、歯肉と歯の接したところより上のほうにたまったプラークや歯石に住み着きます。歯肉炎になると歯肉が赤くはれ、唾液中に細菌が定着して増えるため口の中がネバネバしてきます。正面から口の中を見ると、歯と歯の間の歯肉は三角の形をしていますが、ここが赤く丸く盛り上がってきます。歯を磨いたときに、出血することもあるでしょう。しかし、この段階では、歯肉の中まで細歯は侵入していませんから、骨の破壊はみられません。慨い歯肉炎なら、ていねいなブラッシングでプラークを取り除
くことはト分可能です。おかしいと思ったら、多少出血しても、まずはていねいなブラッシングをしてみましょう。早めに歯科を受診し、プラークや歯石を取ってもらうのが一番のおすすめです。


歯と歯周組織って、どんなもの?

かんだとき、歯にかかる負担はほぼ自分の体重分

ここで簡県に、歯と歯周組織について説明しておきましょう。

歯は、乳歯で20本、永久歯は32本あり、これは親知らずを含めた数です。しかし、最近は親知らずが減って、永久歯が30本や28木という人も増えています。

食べ物が口に入ると、歯でかみ砕きますが、ものをかむ瞬間、歯には自分の体重とほぼ同じくらいの荷重がかかります。歯はこの負担に耐えることができる構造になっており、歯周組織がこれを支えます。

歯の見えている部分を歯冠

下の見えない部分は歯根、支えている骨を歯槽骨といいます。歯冠の外側はエナメル質でおおわれており、水晶ぐらいの硬度があるといわれています。

一方、歯根はセメント質でおおわれています。骨と同じ構造ですが、含まれるカルシウム分は少なめで、エナメル質ほどの硬さはありませんが歯を支えるために大切な役目を持っています。

エナメル質、セメント質の内側にあるのが象牙質です。エナメル質よりやわらかく、虫歯になると侵食され破壊されるところです。象牙質の内側は、歯髄という空洞になっていて、この中を血管と神経が通っています。三叉神経と呼ばれるこの神経は、脳への伝達神経です。


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